人手不足時代に考えたい福利厚生
人手不足時代に考えたい福利厚生
「第三の賃上げ」として注目される、従業員に選ばれる会社づくり
近年、多くの企業で人手不足や人材定着が大きな経営課題となっています。採用募集を出しても応募が集まりにくい、せっかく採用しても定着しない、既存社員の負担が増えている。このようなお悩みをお持ちの企業も多いのではないでしょうか。
一方で、物価高や人件費の上昇が続く中、従業員の生活を支えるために賃上げの必要性も高まっています。しかし、中小企業にとって、継続的な賃上げを行うことは簡単ではありません。
そこで近年注目されているのが、福利厚生の充実を通じて従業員の満足度や安心感を高める、いわゆる「第三の賃上げ」という考え方です。給与そのものを上げるだけでなく、会社として従業員の生活や健康、働きやすさを支える制度を整えることが、採用力や定着率の向上につながる可能性があります。
「第三の賃上げ」とは
「第三の賃上げ」とは、一般的に、定期昇給やベースアップといった直接的な賃上げだけでなく、福利厚生の充実によって従業員の実質的な手取り感や生活支援につなげる考え方として使われています。
たとえば、食事補助、住宅関連の支援、健康支援、医療・介護への備え、休職時の支援、自己啓発支援など、企業によって取り組み方はさまざまです。
もちろん、福利厚生は賃上げの代わりになるものではありません。しかし、給与だけでは伝わりにくい「会社が従業員を大切にしている」という姿勢を示す手段の一つになります。従業員にとっては、日々の生活や将来への不安を軽減できることが、安心して働き続ける理由になる場合があります。
なぜ今、福利厚生が注目されているのか
背景には、深刻な人手不足があります。2025年版中小企業白書では、人材が不足している事業者ほど、直近3年間で採用した従業員の定着率が低い傾向が示されています。人手不足の中では、採用活動だけでなく、採用した人材に長く働いてもらうための取り組みが重要です。
また、物価高や人件費の上昇により、企業側も従業員側も負担を感じやすい状況が続いています。賃上げは重要ですが、企業の収益状況によっては、すぐに十分な対応が難しい場合もあります。
そのような中で、福利厚生を見直し、従業員が安心して働ける環境を整えることは、企業にとって現実的な人材戦略の一つといえます。

中小企業が福利厚生を見直すメリット
- 採用時に会社の魅力を伝えやすくなる
求職者は、給与だけでなく、働きやすさ、休みやすさ、健康面への配慮、将来への安心感なども見ています。
福利厚生が整っている会社は、採用活動の場面で「従業員を大切にしている会社」という印象を伝えやすくなります。特に中小企業の場合、大企業と同じ水準の給与や制度をすべて整えることは難しいかもしれません。しかし、自社の規模や業種に合った制度を用意し、きちんと従業員に伝えることで、会社の魅力づくりにつながります。
- 従業員の定着につながる
人材不足の時代には、新たに採用することと同じくらい、今いる従業員に長く働いてもらうことが大切です。
従業員が病気やケガ、家族の介護、メンタル不調などで働き続けることに不安を感じたとき、会社に相談できる制度や支援があることは大きな安心材料になります。福利厚生は、単なる「特典」ではなく、従業員が安心して働き続けるための土台になります。
- 従業員の健康づくりにつながる
従業員の健康は、企業の生産性や職場の雰囲気にも大きく関わります。
健康診断の受診促進、メンタルヘルス対策、病気の早期発見、休職・復職支援など、健康に関する制度を整えることで、従業員本人だけでなく、会社全体の安定にもつながります。近年は「健康経営」という考え方も広がっており、従業員の健康づくりを経営課題として捉える企業も増えています。
福利厚生を考えるときのポイント
- 従業員にとって本当に使いやすい制度か
福利厚生は、制度を作っただけでは十分ではありません。従業員が内容を知らない、使い方が分からない、申請しづらい雰囲気がある場合、せっかくの制度も活用されません。制度を整える際には、従業員にとって分かりやすく、使いやすい内容になっているかを確認することが大切です。
- 会社の業種や働き方に合っているか
必要な福利厚生は、業種や働き方によって異なります。製造業や建設業では、業務中のケガや熱中症、長時間労働による健康リスクへの備えが重要になることがあります。オフィスワーク中心の企業では、メンタルヘルス、長期休職、在宅勤務環境、健康管理などが課題になることがあります。
- 従業員にきちんと伝わっているか
福利厚生は、導入して終わりではありません。採用時の説明、社内掲示、従業員向け資料、定期的な案内などを通じて、制度の内容を分かりやすく伝えることが大切です。従業員が「この会社にはこういう支援がある」と理解していることが、安心感や会社への信頼につながります。

福利厚生は「会社を守る仕組み」にもなる
福利厚生は、従業員のためだけでなく、会社を守る仕組みとしても考えることができます。
従業員が病気やケガで長期間働けなくなった場合、本人の生活だけでなく、会社の業務体制にも影響が出ます。特定の社員に業務が集中している場合や、専門職・現場作業者が不足している場合は、1人の休職が大きな負担になることもあります。
そのため、福利厚生を考える際には、従業員の安心とあわせて、会社としてどのように事業を継続していくかという視点も大切です。たとえば、次のような観点から確認してみるとよいでしょう。
- 従業員がケガや病気をしたときの支援はあるか
- 長期休職時の収入減少に対する備えはあるか
- メンタル不調や復職支援について相談できる体制はあるか
- 健康診断や予防の取り組みは十分か
- 制度の内容が従業員に分かりやすく伝わっているか
まとめ:福利厚生の見直しは、採用・定着の第一歩です
人手不足や物価高が続く中、企業にとって従業員に選ばれる会社づくりは重要な経営課題です。
賃上げはもちろん大切ですが、福利厚生を充実させることで、従業員の生活や健康、将来への不安を支えることもできます。福利厚生は、単なるコストではなく、採用力の向上、人材定着、従業員の安心感、会社の事業継続につながる大切な取り組みです。
まずは、自社の制度が現在の働き方や従業員のニーズに合っているか、見直してみてはいかがでしょうか。
ティ・アイ・エス株式会社 法人事業部では、企業の福利厚生制度や従業員の安心につながる備えについて、現在の状況を確認しながら一緒に整理いたします。人手不足時代の会社づくりの一つとして、福利厚生の見直しを考えてみませんか。
ご相談時に確認したいこと
福利厚生制度の見直しをご検討される場合は、次のような点を整理しておくと、より具体的に検討しやすくなります。
| □ 現在導入している福利厚生制度 | □ 従業員数、年齢構成、職種 |
| □ 業務中のケガや病気に関する備え | □ 長期休職時の支援体制 |
| □ 従業員からよく出る相談や不安 | □ 採用活動で伝えたい自社の強み |
現在の制度や課題を整理したうえで、自社に合った福利厚生のあり方を考えていくことが大切です。
※本記事は、福利厚生制度や従業員支援に関する一般的な情報提供を目的としたものです。特定の保険商品への加入をおすすめするものではありません。補償内容・支払条件・保険料等は、保険会社・商品・ご契約内容によって異なります。また、制度内容や導入にあたっての税務・労務上の取扱いは、会社の規程や各種法令等によって異なります。詳しくは、各保険会社のパンフレット・重要事項説明書・約款等をご確認いただくとともに、必要に応じて税理士・社会保険労務士等の専門家へご相談ください。
出典・参考資料
- 中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第4節 人材戦略」:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/chusho/b2_1_4.html
- 経済産業省「健康経営優良法人認定制度」:https://www.meti.go.jp/press/2025/03/20260309002/20260309002.html
- freee「第三の賃上げとは?」(用語確認用):https://www.freee.co.jp/kb/kb-management/pay-raises/
- マイナビキャリアリサーチLab「第三の賃上げとは?」(用語確認用):https://career-research.mynavi.jp/column/20250917_101810/
