1. HOME>
  2. お知らせ

お役立ち情報

高額療養費制度の自己負担が引き上げ。従業員の医療費リスクに、法人としてどう向き合うか

高額療養費制度が改正

2026年8月の診療分から、公的医療保険の「高額療養費制度」の自己負担限度額が見直されました。あわせて、長期で高額な治療が続く方の負担を抑えるための「年間上限」が新たに設けられています。見直しは令和8年度・令和9年度の2段階に分けて実施される予定です。従業員の医療費負担が増えるということは、法人にとっても福利厚生や人材定着を考えるうえで無関係ではありません。もっとも、公的制度の自己負担が上がったからといって、すぐに民間の医療保険を追加すべきとは限りません。本記事では、今回の改正内容を整理したうえで、「公的保障・自社の制度・既存の保険」を順に確認し、会社としてどこまで備えるかを考える視点をまとめます。

高額療養費制度とは?

高額療養費制度は、1か月に医療機関等へ支払った医療費が、所得に応じて定められた自己負担限度額を超えた場合に、その超過分が払い戻される公的医療保険の制度です。年齢や所得区分によって限度額は異なり、会社員・自営業を問わず公的医療保険に加入していれば誰でも利用できます。

2026年8月の改正でどう変わったか

・所得区分ごとの自己負担限度額が引き上げられた(例:年収目安約1,160万円以上の区分では、改正前「252,600円+(医療費-842,000円)×1%」が、改正後は「270,300円+(医療費-901,000円)×1%」に)
・長期療養者の負担に配慮し、新たに「年間上限」が設けられた(月ごとの自己負担額が積み上がっても、年間の上限に達すれば以降は還付を受けられる仕組み)
・直近12か月で3回以上高額療養費の支給対象となった場合に自己負担限度額がさらに下がる「多数回該当」の仕組みは、改正後も維持される
・平均的な所得の会社員の場合、1か月あたりの自己負担上限は従来の目安から数%程度引き上げられたとされる

2027年度にも追加の見直しが予定されている

今回の見直しは2段階で実施される予定とされており、2026年度(令和8年度)に続き、2027年度(令和9年度)にも所得区分の細分化などさらなる見直しが予定されています。制度の詳細は、お勤め先の健康保険組合や協会けんぽ、自治体の国民健康保険の案内で随時更新されるため、最新情報の確認が必要です。

高額療養費制度で「カバーされない費用」もある

高額療養費制度は、公的医療保険の対象となる医療費(保険診療分)の自己負担を軽減する制度です。一方で、入院時の差額ベッド代、食事療養費の一部、先進医療にかかる技術料、自由診療・保険外診療など、制度の対象とならない費用もあります。自己負担限度額が引き上げられた今回の改正をきっかけに、「公的制度で軽減される部分」と「対象外となる部分」を改めて整理しておくことは、従業員の負担感や会社としてのサポート体制を考えるうえでの材料になります。

医療保険を追加する前に確認したい3つの視点

従業員の医療費リスクへの備えというと、民間の医療保険の追加を思い浮かべがちですが、本来は「公的保障」「自社の制度」「既存の保険」の3つを順に確認したうえで、会社として備える範囲を考えることが基本になります。

① 公的保障でどこまでカバーされるか
高額療養費制度や傷病手当金など、公的医療保険・社会保険の仕組みで、従業員の医療費や休業中の収入がどの程度カバーされるかを整理します。今回の改正のように、公的保障の内容は制度改正によって変わることがあるため、現時点の制度を前提に確認することが出発点になります。

② 自社の福利厚生・既存の保険で何が手当てされているか
弔慰金制度や傷病見舞金といった社内制度、すでに加入している団体保険・医療保険がある場合は、その保障内容(保障範囲、保険金額、支払条件等)を確認します。「すでにある備え」を把握しないまま新たな保険を検討すると、保障が重複したり、逆に必要な部分が手薄なままになったりすることがあります。

③ 公的保障・自社制度で不足する部分は何か
①②を確認したうえで、差額ベッド代や先進医療の技術料、長期療養時の収入減少など、公的保障・既存の備えでカバーしきれない部分が明らかになった場合に、はじめて民間の医療保険の追加を検討する、という順序になります。従業員構成(年齢層等)や企業規模、今後の採用・定着方針によって、どこまで備えるべきかの考え方は会社ごとに異なります。

一般的には、公的保障・自社制度で大部分がカバーされており不足が小さいと考えられる場合は、現状の備えを維持しつつ定期的に見直す、という判断になることが多く、逆に高額治療や長期療養時の収入減少への備えが手薄だと分かった場合には、実費補償型の医療保険などの追加を検討する、という流れが一般的な進め方です。

まとめ

高額療養費制度は、医療費が高額になった際の家計の負担を抑えるための重要な公的制度です。2026年8月の改正により自己負担限度額が引き上げられたことで、同じ医療費がかかった場合でも、これまでより自己負担が増えるケースが出てきます。だからといって民間の医療保険の追加が常に必要というわけではなく、まずは公的保障・自社の制度・既存の保険を整理したうえで、不足する部分を見極めることが、従業員の医療費リスクに法人として向き合う際の基本的な考え方になります。

よくある質問

Q1. 高額療養費制度の自己負担限度額はいつから変わりましたか?
A1. 2026年8月の診療分から適用されています。見直しは2026年度・2027年度の2段階に分けて実施される予定です。

Q2. 具体的にどのくらい自己負担が増えるのですか?
A2. 所得区分によって異なります。たとえば年収目安約1,160万円以上の区分では、上限額の計算式が「252,600円+(医療費-842,000円)×1%」から「270,300円+(医療費-901,000円)×1%」に変更されました。平均的な所得の会社員の場合も、1か月あたりの自己負担上限は数%程度引き上げられたとされています。

Q3. 従業員の医療保障を見直すとき、何から手をつければよいですか?
A3. まずは公的保障(高額療養費制度等)の内容、次に自社の福利厚生制度や既存の団体保険・医療保険の保障内容を整理することから始めるとよいでしょう。そのうえで不足する部分が見えてきた段階で、民間の医療保険の追加を検討する、という順序が基本になります。

Q4. 保険を追加すべきかどうかは、何を基準に判断すればよいですか?
A4. 公的保障・自社の既存の備えで、差額ベッド代や先進医療費、長期療養中の収入減少といったリスクがどの程度カバーされているかが一つの目安になります。不足が小さいと考えられる場合は現状維持で様子を見る、不足が大きいと考えられる場合は追加の保障を検討する、という整理の仕方が一般的です。

法人保険・事業保険・リスクマネジメントの相談は|TIS法人事業部へ

ティ・アイ・エス株式会社 法人事業部では、従業員の医療保障のご相談をいただいた際、まず公的保障の内容と自社の既存制度・保険を一緒に整理し、そのうえで本当に不足している部分はどこかを確認することを大切にしています。保障内容や保険料だけでなく、会社の福利厚生制度全体や他の制度とのバランスも含めて整理するため、「何から整理すればよいか分からない」という段階でもご相談いただけます。福利厚生としての医療保障に限らず、法人保険・事業保険全般のリスクマネジメントについても幅広くご相談を承っております。

▶ お問い合わせフォームはこちら

※本記事は、2026年8月の高額療養費制度の改正等について、執筆時点で公開されている公的な情報をもとにした一般的な情報提供を目的として作成したものです。特定の保険会社・保険商品を推奨するものではありません。実際に必要となる保障内容、保険料、保険金のお支払い条件等は、保険会社、商品、契約内容、約款、特約等によって異なります。制度の詳細・最新情報は厚生労働省や加入している医療保険者の案内をご確認ください。

ティ・アイ・エス株式会社

#高額療養費制度 #医療費 #社会保険 #福利厚生 #法人保険 #リスクマネジメント

【参考・出典(執筆時点の公開情報)】
・厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html )
・厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」(令和8年度・令和9年度の見直し内容に関する公表資料)
・全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和8年8月から高額療養費制度が見直されます」
・執筆・確認日:2026年10月26日